『「試論」日本人の起源. 日本語を話す弥生人は何処から来たのか?』についての考察2008/11/04 07:51

『「試論」日本人の起源. 日本語を話す弥生人は何処から来たのか?』について、感想と疑問を述べさせていただき、その回答をいただきました。

その中で、Y染色体についての指摘があり、調べなおしてみました。
参考にした文献は、『人類の足跡 10万年全史/スティーブン・オッペンハイマー著』です。

日本および、タミル・ナードゥを含む系統を、抜き出したのが下記の一覧です。
アルファベットが、Y用語による系統で、カッコ内の数字は遺伝子標識です。

分岐の年代については、研究が浅く推定方法に問題があるということで明記されていませんが、まず次の3つのグループ D,C,(O,H,L,R)に別れ、その後、O,H,L,Rが、分岐するという順序です。

タミルと比較的近い日本の系統は、O系統だけということになり、その分岐も1万年以上前であることは間違いが無いようです。
これらを見る限りでは、少なくとも二千年~三千年前に遡って遺伝子の共通性を見出すことは出来ないと思います。

また、遺伝子の研究以前に、南インドの人達は形質的にはヨーロッパ人に近く、また肌の色も濃褐色であり、多くの日本人との相違があります。
この変化にも1万年以上を必要とすることは間違いないようです。

【日本を含む系統】

D(174)* 雲南/チベット/日本/東南アジア
D2b1(125) 雲南/チベット/日本
D2b2(151) 日本

C*(?) 日本
C3a(93) 西ベンガル/インドシナ/日本
C1(131) 日本
C2(208) 日本

O3*(122) 東南アジア/日本/アンダマン/インドシナ
O*(214) 東南アジア/日本


【タミル・ナードゥを含む系統】

H1(82) チェチェン/タミル・ナードゥ

L1(76) チェチェン/タミル・ナードゥ/アンダマン/西ベンガル
L*(185) タミル・ナードゥ/西ベンガル

R1*(207) タミル・ナードゥ/オーストラリア/西ベンガル
R1a(198) チェチェン/コヤ/タミル・ナードゥ/オーストラリア/オセアニア/西ベンガル

アイヌ語と日本語の関係②2008/11/04 10:02

先日、「アイヌ語と日本語の関係」で触れた研究者というのが、片山 龍峯氏(かたやま たつみね)という人で、『日本語とアイヌ語』(すずさわ書店)を執筆しています。

同書の中では、日本語とアイヌ語を比較し、その共通性から同じ祖語から発展したものと主張しています。
片山氏の結論を要約すると、縄文時代に渡来系の言語の影響を受けた後分岐し、その後中国語の影響を受けて現在に至るのが日本語で、北方系の言語の影響を受けて現在に至るのがアイヌ語、という訳です。
分岐の年代は、二千~三千年前を想定し、日本語の祖語とアイヌ語の祖語は、それぞれ異なる言語の影響により大きな変化を受け、今日の大きな違いとなっているということです。

語彙の対応については、数多くの語彙を取り上げ、また語源にまで分解し、細かく比較をしているのですが、十分に納得がいくものとは言えないようです。
アイヌ語学者の中川 裕氏は、『考古学・人類学・言語学との対話 日本語はどこから来たのか』大野 晋・金関 恕 編(岩波書店)の中で、片山氏の音韻対応のし方について、その条件が示されていないので音韻対応とは言えない、と述べています。
また、中川氏は「両語の系統関係に関しては可能性までを否定することは原理的に不可能ですが、蓋然性があるとはとても言えないというのが一般的な見解です。」と結論付けています。

言語学的に見て、日本語とアイヌ語の系統関係を示すことは、不可能なようです。
これは、私自身、片山氏の音韻対応を見て、多少無理を感じるところがあるのでやむを得ないと感じています。
しかし、アイヌ文化とその元となる縄文文化が、文化的に繋がりがないという訳ではないようなので、そういった視点からは言語的な繋がりも否定できないと考えています。

そこで私自身の見解なのですが、片山氏の説明は十分とは言えないが可能性は十分にあると考え、大筋で片山氏の考えを受け入れ、分岐の年代など見直しができないかどうか、考察してみたいと思っています。
また、アイヌ文化と縄文文化の繋がりを確認することで、言語的な繋がりの可能性を補強することができないかと考えています。

アイヌ語と日本語の関係③ なぜアイヌ語に拘るのか?2008/11/04 13:09

なぜアイヌ語に拘るのでしょうか?

自分自身、ふと感じたことなのですが、日本語とアイヌ語が、ここまで異なる言語となってしまっている以上、日本語の起源を探る上で、アイヌ語の存在はあまり関係ないのではないか、ということです。

しかし、もしアイヌ語が縄文時代の言葉を色濃く残している言語であるなら、見過ごすわけにはいきません。
現在の日本語と、アイヌ語が直接結びつかないとしても、アイヌ語と縄文語、日本語と縄文語が、それぞれ結びつくことができれば、結果的にアイヌ語と日本語が結びつくことになります。

するとやはり、”縄文語探し”が大きな課題といえそうです。

縄文語探しには、各地方の方言の存在が重要だと考えています。
特に、東北地方の方言にはより古い言葉が残っているようです。
アイヌ語と東北地方も、密接な関係があるようですし、東北地方の特に北部が重要な鍵を握っている、そんな予感がします。

アイヌ語と、東北方言(東北弁)との共通性が見つかれば、おもしろいことになりそうです。(そうだったら、という思いつきなので、根拠はありません。)