『白村江敗戦と上代特殊仮名遣い』④-「条件異音」の理解が不可欠2011/07/06 17:31

 まず、著者の藤井游惟氏より、YouTubeによるデモビデオの紹介がありました。
 ご興味のある方は、下のリンクをどうぞ。
「白村江敗戦と上代特殊仮名遣い」のデモビデオ
(このブログの右側のツールバーにも貼り付けることができたので、そちらからも見ることができます。但し、少々画面が小さいので、全画面に切り替えて見て下さい。)

 ただ、個人的にはこのデモビデオで、どれだけの方が理解、納得をするのかは疑問ですが、多くの方が何かを感じ取る事ができるものであると思っています。

 私個人としては、この説を概ね信じております。
 ここであえて”概ね”としたのは、私自身、この説の詳細まで理解できていないと思っているので、何か些細な問題点があったとしても、それに気づくことも指摘することも出来ないからです。
 この説を検証できる適当な文献があれば良いのですが、私の目にはとまっていません。
 音声学について、深く理解をすれば、それ相応の検証ができるようにも思えますが、今はそこまでする気がありません。

 話が脱線しました。
 このデモビデオだけでは、本当の理解には至らないと思います。「条件異音」についての理解がなければ、ただ何となくそれらしく聴こえるだけで、「ふーん、それで?」と、終わってしまうかもしれません。
 ただ、これをきっかけに興味をもってもらえれば、という藤井氏の意向に沿う訳ではありませんが、筋違いの反論はあるものの、音声学に基づくまっとうな反論が見当たらないので、それを聞いてみたい、その為に多くの人に見てもらいたい、というのが私の意向です。

 しかし、それ以前に私自身が、もう少し音声学について学ぶ必要がありますね。でも、結構いろいろな本が出ているようで、どこから手を付けるの良いのか悩みどころです。

ピジン語とクレオール語-弥生人と日本語の形成-日本語南方系縄文人語起源説-(藤井游惟氏)より2011/07/11 17:49

 『白村江敗戦と上代特殊仮名遣い』の著者である、藤井游惟氏より、今年1月に行われたセミナーのレジュメをいただきました。
 その題名が『弥生人と日本語の形成-日本語南方系縄文人語起源説-』というもので、その本題については、またの機会に触れるとして、もっとも気になったところが、ピジン語とクレオール語に関する記述です。

 まず、なぜピジン語とクレオール語の話題がここから出てくるのかと言うと、「東北方言はクレオール日本語」である、という藤井氏の説によります。
 失礼ながら、東北方言がクレオール日本語であるのかどうか、という部分についても、またの機会にさせていただくとして、その根本であるピジン語とクレオール語の定義といいますか、解釈について気になった事を書かせていただきます。

 少々長くなりそうですが、本文を抜粋させていただきます。
----- 以下、本文より ------
ピジン語・クレオール語
ピジン語(pidgin language):
 現地人と貿易商人などの外国語を話す人々との間で異言
語間の意志疎通のために発生する混成語。
 狭義には、香港などの中国人がイギリス人と話す為に用
いていたブロークンな英語「business English」が「pidgin」の語源
クレオール語(Creole language):
 ピジン語が広く使われる社会環境で育つと、ピジン語を母語として話す子供達が現れ、当該社会全体の共通語として広まる場合がある。この母語として話されるピジン語がクレオール語
Creoleというのは、中南米の植民地生まれのヨーロッ
パ人、或いは人種を問わず中南米の植民地人のこと。
 母語として話され、社会全体に広まった混成語が最初
に確認されたのが、元フランス領ハイチの「ハイチ語」
だったため、このような言語を「クレオール言語」と呼
ぶようになった。
従って、狭義の「クレオール語」とはハイチ語のこと。
 
●クレオール語の語彙には、宗主国語と現地語の単語が混じるが、文法規則や音韻規則はそのどちらとも異なる「第三の言語」である。
(「ザ・シュートは、ラディカルなコンセプトで、ナウいサウンドをクリエイトするスーパーユニットである」 これは、外来語を多用しただけの日本語であり、ピジンでもクレオールでもない。一般言語学を全く勉強していない国語学者などには、このようなものをピジンやクレオールと混同している人間が多いので注意)

●母語として話されるクレオール語は「完全な言語」である
  ・・・当該言語を用いて表現できないことは何もない

(中略)

●ピジン語・クレオール語が発生する社会環境
① 植民地などに於いて、同一社会で異言語話者が共存し、日常的にコミュニケーションをとる必要があり、
② しかも「正しいA語」「正しいB語」を教える教育制度がない場合、
③ 現地人が政治的に宗主国人)の言語を耳コピで模倣することによって、まずピジン語が発生し、
④ 宗主国人が、ピジン語の文法や発音の誤りを訂正しないで放っておくと、現地人にはそれが定着してしまい、
⑤ やがて「変な宗主国語」を母語として話す世代が現れて、社会全体にその言語が広まってゆく
8~12世紀の東北地方はまさに、蝦夷が日本語を耳コピで模倣することでクレオール語が発生する社会状況にあった。
----- 以上、本文より -----

 レジュメということもあり、細かい部分は省略されているであろうということは承知しているつもりですが、核心的な部分が抜けているようにも見えるので、恐縮ながら、私の知る限りの補足をしてみたいと思います。

【ピジン語は不完全な言語】
 異言語間の意思疎通の為の混成語であるのには違いが無いと思いますが、ただ単語を並べただけのような言語であることが多く、規則的な文法が無い、言わば不完全な言語といえるのではないでしょうか。

【クレオール語は新たに生み出された言語】
 クレオール語は、ピジン語を話す社会で育った子供達が、ピジン語を元にしてはいるが、言語として不完全であった部分を新たに生み出し、完全な言語として成立した言語と言えるのではないでしょうか。
 ここで重要なのは、ピジン語では不完全な言語であるがゆえ、表現できなかったことも表現できるようになる、というところでしょう。
 不完全な言語が、完全な言語へと変化する理由については、スティーブン・ピンカーによる「言語生得説」が背景にあるのですが、詳細については『言語を生みだす本能(上・下巻)』を読んでいただくのが良いでしょう。

 藤井氏も、クレオール語が完全な言語である点には触れているのですが、その理由が不明瞭で、他の記述からは、ピジン語が定着して世代を重ねると、それがクレオール語であると言っているように見えてしまいます。
 また、「耳コピで模倣」という表現が、単なる模倣ではないと思っている私には、違和感を感じるのです。

【社会的な現象ではあるが重要なのは脳の発達過程】
 ピジン語やクレオール語に限らず、言語の変化は社会的な現象ともいえるのでしょうが、それを捉える人によって結果は異なってくるようです。
 言語的に十分発達している成人にとっては困難な事も、言語発育段階の幼少期の子供達なら、ただ言語を習得するのではなく、生み出すことが可能であるという、脳の発達過程の問題なのでしょう。

【言語の変化を見る目が変わった】
 言語の習得が、単なる学習ではなく、ある意味本能的なものであり、脳の発達過程が重要であるとわかってくると、日本語を含む言語の変化という現象を見る目が変わりました。
 今はまだ、うまく説明できないのですが、これまでこのブログで書いてきた言語、特に日本語の起源に関する記述を、根本的に見直さないといけないような気さえするのです。

【東北方言はクレオール日本語?】
 またの機会にするつもりだったのですが、一言だけ。
 私のクレオール語に対する解釈は「狭い」ようなので、東北方言がクレオールと言えるような気はしませんが、「広く」解釈すれば、そう言えなくも無いのかもしれません。ただ、あまり広げすぎると何でもクレオールになってしまいそうな気もします。
 東北方言には、異なる言語の影響がある、ということは言えそうなので検討する価値はあるでしょう。ただ、現状からすると、関東と関西の違いも同じように見ることができそうなので、キリがないかもしれません。

かながわソーラープロジェクト研究会第一次報告2011/07/16 16:11

 「かながわソーラープロジェクト研究会」の審議経過については、ときどきチェックしていたつもりだったのですが、”第一次報告”というのが上がっていたのに気づきませんでした。
 こう言ってはなんですが、会議日程と同列に第一次報告のページがリンクされているのは、分かりにくいですね。

http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f300314/
 このページの、「会議開催日・会議記録等」の「第一次報告」の右側、”平成23年6月21日”のリンクです。

 この第一次報告は、6月21日に発表されたのでしょうか?第三回の審議が6月21日なので、その内容が含まれていれば、もう少し後に発表されているような気がするのですが・・・。

 それはともかく、22ページからなる第一次報告書の内容ですが、どうでしょう?
 ざっと目を通した限りでは、あまり具体的な事が決まったようには見えません。
 よく読んでいないので、これ以上のコメントは差し控えますが、期待するような内容は、見当たらないような気がします。
 続きは、もう少しちゃんと読んでからにします。