『仙台 弥生時代も巨大津波』-沓形遺跡2011/04/08 15:53

 4月6日(水)の読売新聞、文化面で『仙台 弥生時代も巨大津波』というタイトルの記事を目にしました。
 先月の震災後、約1100年前、平安時代の貞観11年(869年)の津波については、比較的多く報道されているようですが、それより更に約1000年遡る弥生時代にも、大きな津波があったということは、初めて知りました。

 仙台市若林区荒井にある「沓形遺跡」では、弥生時代の水田跡が発掘され、その水田を覆うように、海浜特有の砂が数センチの厚さで堆積しているのが確認された、ということです。(平成19年の調査)

 新聞記事では、今回の津波は、貞観、弥生の過去2回の津波と同規模か、それ以上の巨大津波であったことは間違いないとし、ほぼ1000年周期で繰り返されることは、予測できたはずだ、としています。

 さて、だいぶ省略しましたが、それでも新聞記事の内容だけでは、ちょっと物足りず、調べて見ると仙台市のHPに、沓形遺跡の調査結果が出ていました。
 詳しくは、以下のリンクを見てみてください。
【仙台市 沓形遺跡 発掘調査 現地説明会資料】

 
 今まで、このブログでは、弥生時代の水田稲作については、色々と考察してきたつもりでしたが、東北方面にはあまり目が行っておらず、2000年前には既に仙台まで水田稲作が伝わっていた事に、恥ずかしながら感心してしまいました。

 発掘された地層は、弥生時代の水田跡の上に、津波による砂の層が覆いかぶさり、その上に、古墳時代前期(4世紀)の水田跡になっています。
 津波の後、再び水田稲作ができるようになるまで、長い年月を必要としていることがうかがえるので、今回の津波からの復旧にも、かなりの労力が必要と思われます。

 また、上記の調査結果からは、時代と共に変化する海岸線の様子や、陸側からの堆積物と津波による海側からの堆積物の見分け方など、興味深い調査結果を見ることが出来ます。

 さて、今から約1000年後、仙台に住む人々は、次に来るであろう大津波に対して、どのような対応を取るのでしょうか。
 1000年も未来の話など、想像することも難しいですが、もしかすると、今回以上の大津波にも耐えうる、防波堤のような物を完成させているかも知れません。
 ただ、それ以上に気になるのは、ここが「日本」という国であり、日本人(現在の日本人の末裔という意味で)の住む土地であってほしいと思うのは、私だけでしょうか。

『縄文人と「弥生人」古人骨の事件簿』⑤・・・新方遺跡の人骨(まとめ)2009/04/23 17:35

前回の予告どおり、まとめに入りたいのですが、最初にお断りしておくことがあります。
新方遺跡に関する記述のタイトルは、「速報・弥生時代前期の縄文人?-神戸新方遺跡」です。
”速報”の文字が示すように、とりあえず分かっていることを書いているのであって、この人骨が何を意味するのか結論には至っていません。

片山氏がまとめたことを、簡潔に箇条書きにすると、次のようになります。
・弥生時代開始期の人骨としては、近畿地方で最初の発見
 (北部九州でも、その時期の人骨は皆無)
・縄文人を彷彿とさせる特徴が多い
 (弥生時代に入っても、縄文人そのものといえる人々の存在を示す)
・埋葬姿勢に謎
 (縄文人とは異なる伸展葬、しかもうつ伏せ)
・三人分の遺体すべてに石鏃
 (死因となった可能性が高い)

疑問だらけなのですが、”「弥生人」渡来仮説を否定する材料と成りうる発見”と捉えています。
(ここで言う「弥生人」渡来仮説とは、渡来人が大量にやってきて、縄文人を排除するようにして、日本列島へ広がっていった、という説)
果たして、渡来説を覆すことができるのでしょうか?

次回は、私自身が”想像をたくましく”して、できるだけ客観的に考察してみたいと思います。

『縄文人と「弥生人」古人骨の事件簿』④・・・新方遺跡の人骨2009/04/21 21:28

近畿地方、神戸市にある新方遺跡の弥生時代初期の人骨について、詳しく説明があるので、簡単にまとめたいと思います。

まず、前回、「縄文人と考えられる顔立ちの成人男性二体」と書きましたが、厳密には三体です。
第一号人骨から、第三号人骨と呼び、それぞれの特徴を簡単にまとめます。

【第一号人骨】
1.全身を伸ばした伸展位の姿勢
2.理由がわからない、うつ伏せの格好
3.成人男性
4.死亡年齢は、30~40歳くらい
5.身長は、155~160センチ
6.骨太で腕、脚の筋肉がたくましく発達していた模様
7.頭蓋骨は大きく頑丈、相当な大頭
8.下顎骨も大柄で頑丈、左右に幅広い
9.下顎角はがっしりとして、ひどくエラが張った角ばった顔
10.オトガイと呼ばれる顎の先の膨らみが顕著
11.上下左右の犬歯と、右下の第二大臼歯は、風習抜歯と見られる
12.上下の歯が毛抜き状に噛み合う鉗子状咬合
13.サヌカイト製の石鏃が腹部に刺さっていた模様

以上、縄文人的な特徴を多く見ることができる。
(特に、8~10の下顎骨に関する部分)

【第二号人骨】
1.骨の腐食、分解が進みほとんどの骨が消え行く直前の状態
2.うつ伏せの伸展姿勢と見られる埋葬姿勢
3.歯だけが唯一の観察材料
4.上下左右の犬歯が抜歯されていた可能性が高い
5.性別の判定は不可能
6.死亡年齢は、30~60歳(歯の咀嚼による磨り減りの程度から判定)
7.胸部の骨格のあたりから、サヌカイト製の石鏃が発見

以上、観察材料が少ないが、風習抜歯の様子から、縄文人的な特徴も見られる。

【第三号人骨】
1.仰向けの伸展位の姿勢で埋葬
2.骨に厚みがあり、頑丈な脳頭蓋
3.下顎角の前にあるべき”へこみ”(角前切痕)が無い
4.下顎骨は非常に頑丈な造り
5.下顎骨の第一大臼歯と第二小臼歯に過度の咬耗
6.下肢骨に縄文人的な多くの特徴
7.男性の可能性が高い
8.死亡年齢は、30歳~60歳
9.身長は、160センチ前後
10.胴部を中心に17個もの石鏃が発見

以上、縄文人的な特徴を多く見ることができる。
(特に、3~6に関する部分)

これら三体の人骨の特徴や、状況から一体なにが分かるのでしょうか。
長くなってきたので、また次回に・・・。