日本語 文字を獲得するまでの1万年② クレオールタミル語説(12)/『日本語の起源』を振り返って②2008/10/15 16:16

1)単語の対応-語根の比較

500語にのぼる対応語の中から、『日本語の起源』には約300語が一覧となって掲載されています。
それを、端から順に眺めてゆくのですが、確かに”似ている単語”は、多くあるようです。
思わず納得してしまうような単語の対応もあるのですが、それと似た音を持つ別の単語が、異なる変化のし方をしているが気になります。

また、タミル語と対応する日本語が、現在も使われている語彙のものから、古語や方言であるものと、語彙によって異なるのですが、なぜ使われる時代や地域の違いがあるのか、説明がありません。
あるタミル語の語彙と意味が対応する日本語を探したら、古語に見つかったり、方言で見つかったりしたので対応語として取り上げた、というようにも見えるので、偶然の一致とどう違うのだろうかと疑問を感じます。

特にタミル語と日本語の子音の対応(p - f, v - f など)や、母音の対応(o -a など)は、なぜそれらが対応しているのか説明がありません。
その対応表に応じて、いくつもの単語を変換すると、それぞれの単語が”それらしい”単語になるので、そういう対応(変換のし方)に決めた、という感じがあります。

タミル語説の勉強不足なのはよく分かったが、足踏みはしない。2008/10/15 16:54

クレオールタミル語説について、いろいろと考えている内に、タミル語説に対する私自身の勉強不足があることが良く分かりました。
もっとも、大して文献を読んでいないので当然です。
それで、分かったような気になっていたのも事実でしょう。

しかし、今はこのまま進めようと思います。
詳しく勉強した上で進めるのが筋だとは思いますが、それ程魅力を感じていないので、今はやめておきます。
高価な本なので、手が出ないというのもあります。
図書館で借りれるのは分かっているので、いづれ気が向いたら借りて読んでみたいと思います。

言語の由来を考えるとき、考え方、考える方向性が大きく分けて二通りあるのではないかと思うようになりました。
一つは、言語的資料から言語の由来を想定し、それに合う考古学的、人類学的な証拠を突き合わせる方法。
もう一つは、考古学的、人類学的な証拠から、言語の由来を想定し、言語に関する証拠を突き合わせる方法。

もちろん、大野氏は前者だと思いますが、私は後者に近い発想です。
別の言い方をすれば、言語的資料を前提とするのか、考古学的(人類学的)資料を前提とするのかの違いだと思います。

いくら言語的資料で説を唱えられても、考古学的(人類学的)な資料と矛盾を感じるようでは、受け入れがたいものがあります。
私自身、どちらかといえば科学的、数学的な発想をする方だと思うので、考古学的な”モノ”による説明は、説得力を感じます。

日本語 文字を獲得するまでの1万年② クレオールタミル語説(13)/『日本語の起源』を振り返って③2008/10/15 17:08

2)文法の比較

『日本語の起源』では、助詞、助動詞のごく一部について記述されています。それを読むと、なんとなくもっともらしく見えてきます。
逆に、「日本語・・・/小泉 保による反論③」で紹介したように、格語尾が助詞に変化している例などを見ると、とても近い言語とは思えません。

文法的に、似ている部分を取り上げて、「これだけ似ているんだから、同系の言語ですよ。」ということもできるでしょう。
逆に、似ていない部分を取り上げて、「こういう違いがあるのに、同系の言語と言えるのか。」ということもできるでしょう。

どこまで似ていれば、同系の言語といえるのか。
その基準は、難しいところなのでしょうが、私の感覚では、ちょっと遠いと感じます。(予告の通り、インスピレーション頼りです。)