『銃・病原菌・鉄』(上下巻)ジャレド ダイアモンド:草思社2011/03/09 05:22

 十年以上前に出版された本でありながら、つい最近になって、この本の存在意義を認識し手にとったという、ちょっと恥ずかしい気もするのですが、ようやく読み終えました。

 このブログを始めて、約二年半が経ちますが、どうしてもっと早くに読んでおかなかったのだろうと感じる内容でした。
 やはり私にとって、もっとも意義があったと感じるのは、上巻の『第2部 食糧生産にまつわる謎』ではないでしょうか。
 食糧生産に関する内容に関らず、世界全体を視野に入れた幅広い目線に考察して書かれているので、今までの自分の考え方が狭く、断片的であったように感じられました。

【農耕の始まりについての誤解】
 稲作の起源については、中国の長江流域と考えて、まず間違いが無いと思いますが、野生イネがどのような経緯で栽培化されたのかについては、まだ分からないことが多いと思います。
 例えば、このブログでも何度か取り上げた事がある『稲作の起源-イネ学から考古学への挑戦』(池橋 宏:講談社選書メチエ)などでは、栽培化への経緯を考察しているのですが、その内容から受ける印象は、”栽培することを意識的に始めている”ように感じることです。
 恐らく、これは私自身、読む側の思い込みによるところが大きいと思うのですが、その思い込みを払拭させてくれるような書き方はされていないように思います。
 この点について、ダイアモンド氏は、次のように述べています。

 ”人類が食料を生産する方法を「発見した」とか「発明した」とかいうのはわれわれの思い込みであって、事実ではない。狩猟採集生活をつづけるか、それともそれはやめにして食料の生産をはじめるかという二者択一で、農耕民になることを意識的に選択した例は、現実にはほとんどない。食料の生産を最初に自発的にはじめた人びとは、地球上のどの地域においても、誰かが農耕をしている様子をそれまで見たこともなければ、農耕とはなんであるかもまったく知らなかった。だから、彼らが意識的に農耕民になろうとすることなどできるはずがない。人類による食料の生産は、これからわれられが考察していくように、こうするとどんなことが起こるかを意識することなしに、さまざまな決定を下していった結果の副産物としてもたらされたものである。

 ちょっと引用が長くなってしまいました。
 しかし、現代の農耕社会に生きる我々にとって、農耕をすれば、食料が生産できるという当然の結果を、頭から取り払うのは、以外に難しいことかもしれません。
 少なくとも、私にとっては、この一文によって、農耕の始まりに対するイメージが、だいぶ変ったような気がします。

【日本列島の稲作の始まり】
 もちろん、本書では、日本列島での稲作の始まりについて、述べられている訳ではありません。
 しかし、食料生産と定住化に関する記述や、農耕化が可能な野生植物が自生していた地域、そして、農耕の開始が実現していない地域の狩猟採集民においても、さまざまな野生植物の採取と選抜によって、食料生産が開始される可能性があった事などの記述から、日本列島における水田稲作が開始されが、次のように思えてきます。

①水田稲作を携えた大量の渡来人は不要
②縄文人は比較的容易に水田稲作を導入できた
③縄文人が水田稲作を持ち帰った可能性もあるのでは
 恐らく現在も定説であろう大量の渡来人による水田稲作の導入と、弥生時代の開始については、思い込みによるところが大きいように思えてきます。
 そもそも大量の渡来人の根拠となっているのは、弥生時代後期に発見される多くの人骨の形質が、縄文人とは大きく異なることではないでしょうか。
 それを最大の根拠として、それに当てはめるかのように、渡来人説を構築してきた、そんな経緯があるように思えます。
 しかし、視点を変えて本書の考察を基に、考え直してみると、縄文人が積極的に水田稲作を導入したと考える方が自然です。
 説明不足だとは思いますが、本書による世界的な食料生産に関る考察から、それまでに思っていたことの確信を得たというのが実感です。

このブログの本棚(ヴィジェット)を作り直しました2011/03/09 08:08

 今まで、右側のカレンダーの少し下に、amazonのヴィジェットによる”本棚”を二つ作っていました。

 本棚1の”読んでいる本、気になる本”は、そこに表示する冊数が少ないので、このままで良しとしました。

 本棚2の”読み終えた本”については、だいぶ冊数が増えてきて見づらい事と、登録のし忘れなどで、肝心な本が抜けていたことなどから、ページの最下部に「くるくるヴィジェット」により、ジャンル分けして表示するようしました。

 ある程度の冊数になってしまったので、表示されるまでに、多少時間が掛かることがありますが、気長に待ってください。
 また、ヴィジェットの一つ、又は複数が上手く表示されずに、止まってしまう場合もあるようなので、その際には、「再読み込み」を行ってみてください。

【今後の課題】
①表示できない本がある
 以前からそうだったのですが、ヴィジェットに表示できない本があるのです。
 それは、イメージ(画像)が登録されていない本で、カスタマーイメージを登録しても、結果は変りません。(商品のページには、カスタマーイメージがきちんと表示されます。)
 そういった本が何冊かあり、今回作り直したヴィジェットにも表示されていないので、何か別の方法を考えたいものです。

②ジャンル分け
 とりあえず4つの「くるくるヴィジェット」に分けましたが、そのジャンル分けが適切かどうかは、多少の疑問があります。
 一つのヴィジェットの冊数が極端に多くなったり、少なくなったりするのも見難いので、バランスが難しいところです。
 また、複数のジャンルにまたがると考えられる内容の本もあり、現時点では一つのジャンルに入れていますが、複数のジャンルに表示させた方が良いかもしれません。
 更に、”その他”については、冊数が増えればいずれ分割が必要になるでしょう。

③編集の煩雑さ
 ヴィジェットに表示させたい本は、商品ページからISBNコードを読み取って、そのコードを設定しなければなりません。
 単純に追加するだけなら、まだ良いのですが、ジャンル分けなど整理する時には、直感的にどの本か分からないので、誤った操作をしてしまいそうです。
 ・・・でも、これは課題というより、ただのボヤキですね。